漆工 綿引千絵の奮闘記
 
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歩みの鈍い者
 前にも増してブログを更新するのが大仕事に感じ、重い腰が上がらなくなってしまった。これからは開き直って、目標「月1更新」にしよう。ひと月に一つくらいは述べたいことが出てくるだろう。毎日漆のことを考えて生活してるのだから、それすら思いつかないようでは心許ない。かといって、日々のことが逐一伝わるほど公の場に自分をさらすのは恥ずかしいし、それほど皆さんに関心を持たれているとも思えないので、「日々更新」などという高いハードルはあきらめよう!
 だいたい、作業が思うように進んでいない時には(9割方そうだが)ブログに向かう気持ちのゆとりがない。さらに、自分が情けなくて人とも接触したくないし、自分が消えて無くなってしまいたい気分になる。皆さんも仕事がうまく行かない時はやはりそんな心境になるのでしょうか?私が仕事できなさすぎで落ち込み過ぎだからでしょうか…。  そんなわけで、無理してブログを書こうとして重荷になるよりは、そんな時はできなくてもまぁいいか、と思うことにした。

 
 今年も春からうまく行かないことだらけで精神状態は滅茶苦茶だった。失敗しながら何度も工程を重ねてようやく、溜まっている上塗の第1弾に漕ぎ着けた。おかげで今は少し気持ちが軽い。私の仕事場は上塗専用の部屋がないから、上塗が頻繁にできない。それぞれの品物を中塗りまで進めてから、「上塗期」にまとめて仕上げる。それと、上塗乾燥装置もないから、一度に塗れる量が限られる。だから、順次、少量ずつ上塗第2弾・第3弾と続く予定。
 今は技術の面でも設備の面でも資金の面でも、すべて発展途上というかスタート地点で足踏みしているというか、仕事を回していけるだけの量が作れていない。椀でも匙でも数個ずつを数種類という具合だから効率が大変悪い。もっと効率の良いやり方を工夫しなくちゃなぁ。もっと多く生産できるようになりたいなぁ。 
 
 私はのろまだ。そして不器用だ。漆を始める前からわかっていたし、今も毎日痛感している。それは事実なんだ。でも仕事として漆をやりたいと思うのだから、そして作りたい物があるのだから、今の自分でがんばるしかない。漆の若手作家さんの個展や雑誌の記事を見たりすると、ついその人の年齢と漆歴何年というのが気になる。多くの人は私より何歩も先を行っており、歩みのスピードも数倍速いなぁと思う。
 私は新しい器を考案するにもパッパッと形にできず、じわじわ頭の中で育って、漠然とあった物が具体的な形になって「あ、ここはこうでこうでこうしたい」と思うまでとっても時間がかかる。個々の作業にしても、元来手先の不器用さがスゴイので、手の動かし方の要領がなかなかわからない。それでいて、遅いくせに細かい部分の形状や雰囲気に目を潰れず、気の済むまで調整したくなる。
 それで結局必ず落ち込んで「こうだから自分はダメなんだ」とダメな理由をあげつらって、余計に自分を痛めつけるみたいなのがいつものパターンだった。でも最近、全部ひっくるめて自分を受け止められつつあるような気がしてきた。何年も飽きるほど落ち込み続けたからか、こんなんじゃ精神が保たないとうすうす気付いたのか、もがきながらの作業の中で「こんな自分なんだ」と妙に納得して、ちょっと愛着すら感じるようになった。
 
 上手かろうと下手かろうと、早かろうと鈍かろうと、そんなの使う人は問うていない。目の前の物が「良いか悪いか」「好きか嫌いか」なのだ。私の側で言えば、それが納得できた物かどうかなのだ。
 もちろん技術の研鑽は良い物を作るために必要だし、早く沢山作らなければプロとしてやっていけない。ただ、私の目的は「良い物」を作ることだったんだなぁ、と今更のように気付く。上手いこと、早いことが最終目的なんじゃない。だから、のろいと嘆くこともないし、嘆く暇があったら良い物を作ることに鼓舞奮闘せねば!とじんわり思った次第なのだ。
 そのうちまた落ち込むだろうが、亀や虫けらのようにひたすら行こう。
【2006.07.25 Tuesday 18:53】 author : chiewatabiki
| 仕事 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
この記事に関するコメント
少しさとりをひらきましたね(年の功?)。
わたしも「良い物」がつくれるようがんばります!
| yosi | 2006/08/23 12:45 AM |
はい、小さな小さなさとりに至りました!そのおかげで最近はいい状態で漆に向かえています。
それから…、yosiさんのコメントのおかげで、長年「年の高」と思い込んでいたのが恥ずかしい間違いだと知りました(^_^;)
30代も悪くないですね。前向きにがんばります!

| chie | 2006/08/23 7:59 PM |
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