漆工 綿引千絵の奮闘記
 
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いまさら、屋号「中野下漆器店」のこと。
改めまして、中野下漆器店こと綿引千絵と申します。

よく「中野下漆器店って何?」と聞かれます。
「ちゅうのげ?」とか…。あながち間違ってなかったりして!?

だいぶ前に試しにこの屋号を決めてから、名乗ったり名乗らなかったり、位置づけもはっきりさせないまま今に至ってしまいました。
今となっては、各地でツメあまな設定のゆるキャラが市民権を得ているんだから、私もゆるキャラ路線なんだ、と開き直っております。

たしかに位置づけは曖昧なのですが、名付けについてはそれなりの思いは込めたので、「中野下漆器店って何?」へのお答えとして、少々ご説明申し上げます。



中野下は「なかのした」と読み、とても小さな地域名です。私の生まれ育った町内の名前です。
屋号に誰も知らないような地名を入れたのは、その場所で漆器業をしている、ということを大事にしたかったからです。
漆を生業にしようと思い制作し始めた頃、漠然と頭にあったイメージは、昔のいわゆる“ぬりもの屋”でした。

一村に一軒あったかどうか知りませんが、とにかく漆の職人さんが昔は地域にいて、人々は冠婚葬祭の食器一式をそこで誂えたり、普段使うお椀(それも白木に1,2度塗っただけの簡単な椀かもしれない)を直してもらったり、何か相談があったらとにかくそこへ持ち込んで、何とかしてもらう、そういうのがぬりもの屋の姿だったと想像しています。
もちろん、時代や地方によって、塗師屋(ぬしや、=ぬりもの屋)の性格はまったく異なっただろうけれど、漆器の注文を受け、漆の仕事を担う存在は各地域にいたはずです。

私も、自分が住み仕事しているこの町で、誰にも気軽に尋ねてもらいたいし、何か要る時には私のぬりものを使ってほしい。
土地と関係ない都心のギャラリーばかりで販売するのでなく、まず普段近所を行き交う人達に漆を紹介したい、漆のいっさいがっさいの窓口でありたい、という願いが強くありました。
そして、その姿勢を何年経っても持ち続けて、いつか活動が広がっても根っこは“まちの漆器屋”として存在しよう。そんなふうに考え、超ローカルですが、あえてこのネーミングにしました。


次に後半の「漆器店」のこと。
これも思えばヘンですよね。「お店はどこですか?」と尋ねられることもあり、ややこしくて申し訳ないです。
名前は漆器店ですが、実は店舗はありません。よそのぬりものを仕入れて販売することもありません。
私個人の活動名・屋号として自分を「漆器店」と名乗ってみたいと思ったのです。

漆塗りする者の肩書としては、「漆職人」「塗師」「漆作家」「漆芸家」などがあります。(呼ばれる分には、呼んでいただけるなら何でもありがたいのですが、自分で名乗るにはそれなりにしっくり来る肩書を選びたくなるものです。)
さて自分は何かな?と思ったとき、まず「漆芸家」は候補外でした。私は日常の生活道具、つまり“商品”を作る作り手なので、美術品は作らない。
作った物の中に美があるようにと心掛けることはしますが、美術が目的で物を作る芸術家ではありません。

それから、「漆職人」は目指すところだけれど、本当の職人の厳しさ、すごさを知っているから、私は職人と名乗る資格はないと思っています。

デザインから売り方まで自分の構想で漆器を生み出すという意味では、たしかに「漆作家」ではあります。
ただ、“作家”という言葉にはいろんなイメージがくっついていると思うのです。
職人仕事との比較で「しょせん作家」みたいな言い方も聞くし、逆に高名な作家さんを「作家先生」と呼び、その人の作というだけで有難がったり…。
「作家物の器」というと、高そうだったり、ファンが収集してそうだったり、いくら普段づかいといっても、特別なこだわりのある人だけが近付けるもののような印象を抱く人も多いでしょう。
私のことをまさか作家先生と呼ぶ人なんていないけれど、でもなんか“作家”の語感は違うかなーと感じています。

それで最近は、シンプルに「漆を塗る者」と受け取ってもらえそうな「漆工」と自己紹介することが多いです。
この漆工という肩書を屋号で言えば、「漆器店」になるのだと思います。
工人、士農工商の工もそうですが、「工」は物を作る職業を指しますよね。
職業として、なりわいとして、漆をやる。そして人々の生活に役立つ“商品”を作る、そして売る。売ったお金で食う。私はそんな人間になりたい!
その決意を「漆器店」という屋号で高らかに(?)宣言(?)したのです。


結果として伝わりづらく、面倒臭いから自分もあまり使わない名になってしまいました。
でも、自分ではこの名前、嫌いじゃないなと思っています。職種としては一人の作家だろうけれど、「漆器店」。
だから、みなさまにメールや初対面でご挨拶することがあったら、「中野下漆器店の綿引千絵です」ではなく、「中野下漆器店こと綿引千絵です」と言うと思います。

わたくし中野下漆器店を今後ともどうぞよろしくお願いいたします(そろそろ馴染めそうな気がします…)。



【2011.09.18 Sunday 11:18】 author : chiewatabiki
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| - | 2011/09/24 8:45 PM |
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